2024.12.27
2025.01.20
【セミナー開催レポート】宇宙開発と宇宙ビジネスの将来
- 文字で構成されています。
※この記事内容は
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インソースデジタルアカデミーは、2024年11月6日に無料オンラインセミナー「宇宙開発と宇宙ビジネス」を開催しました。本記事では、合同会社スペースシステムサポーターズ代表社員の高橋氏に講演いただいた「宇宙開発の歴史と宇宙ビジネスの現状、将来展望」の概略をご紹介します。
- 講演者:高橋 実(たかはし みのる)氏
- 合同会社スペースシステムサポーターズ 代表
- 1973年 日本電気株式会社 入社
- 人工衛星や打上げロケットの監視・制御を行う地上局の開発、宇宙事業戦略の立案に従事。
- 2012年 同社退職
- 個人事業として宇宙開発のコンサルティングを開始。
- 2019年 合同会社スペースシステムサポーターズ設立
- 代表社員に就任。
【同社の事業分野】宇宙関連機器メーカー、宇宙利用ビジネス推進企業(宇宙ベンチャー)に対する技術コンサルティング、システムエンジニアリング支援、人材育成
宇宙ビジネスの現状とトレンド
宇宙ビジネスは下図の通り、打ち上げロケットなどの「①輸送セグメント」、人工衛星ロケットを使って宇宙空間に打ち上げられ、地球のまわりをまわっている人工物のことを扱う「②宇宙セグメント」、観測データ受信などの「③地上セグメント」、データを使ってナビや環境などに活用する「④利用セグメント」の4つに分類できます。
宇宙ビジネスには4つの分野(セグメント)がある
日本における宇宙ビジネスは、官主導から民間主導へとシフトしている点が大きなトレンドです。これは2008年に制定された宇宙基本法や、2016年の宇宙活動法がきっかけになっており、現在は約4兆円とされる国内の宇宙ビジネス市場は、2030年代初期には倍増すると予測されています。
出典:経済産業省ウェブサイト「国内外の宇宙産業の動向を踏まえた経済産業省の取組と今後について」
現在では宇宙に関係するスタートアップは国内に約100社あり、特に宇宙から送られてくるデータを活用する「④利用セグメント」で多くの企業が参入しています。
宇宙利用の現状とその可能性
宇宙利用の主要分野は、「通信・放送」「測位」「観測」の3つが挙げられます。通信分野では、人工衛星を通じてインターネット回線を提供する衛星コンステレーション 英語で「星座」のことシステム、測位としてはGPSシステムがよく知られています。
衛星コンステレーション・Starlink衛星のイメージ
※「宇宙政策を巡る最近の動向と宇宙技術戦略の進め方」p.2(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/space/comittee/01-kihon/kihon-dai34/siryou2_1.pdf)をもとに当社作成
また、宇宙からさまざまなセンサーを用いて地球を観測するシステムを「リモートセンシング」と呼び、観測データは農業や漁業、防災、さらには金融・保険業界など、さまざまな分野で活用されています。
加えて安全保障分野では、通信衛星を利用した通信ネットワークの構築や、観測衛星を利用したミサイル発射の探知といった応用が進みつつあります。この分野は、高いセキュリティが求められますが、日本においても今後重要度を増すと考えられます。
このほか、民間が進める人工流れ星や宇宙旅行といったエンターテインメント分野も、宇宙ビジネスの一角を担うようになりつつあります。
宇宙システムと関連技術
宇宙セグメントでは、宇宙空間に特有の温湿度や放射線、振動・衝撃など厳しい環境に対応する必要があります。故障しても簡単に修理に行けませんから、位置や状態などを常に把握し、持続的な稼働を維持するための高度な技術が求められています。
一方で、地上セグメントは、宇宙セグメントとのデータリンクや無線通信を通じて、位置や姿勢、動作の確認を行い、ミッションの遂行に最適な状態を保つ必要があります。ネットワーク技術やセキュリティ、省エネルギーも重要視されます。
宇宙分野における課題とは?
宇宙空間には、衛星の残がいなど「スペースデブリ」と呼ばれる宇宙ゴミが存在します。1cm以上のものだけでも70万個もの数が漂っていると言われており、宇宙環境の悪化が懸念されています。
また、宇宙活動や宇宙資源の所有に関する国際法は未整備の状態です。
そのような中で、宇宙空間を戦場にするという動きまであるのです。
他にも、日本の宇宙ビジネスにとっては以下の課題が挙げられています。
- ヒューマンリソースと研究開発資金の不足
- 安定的なシステム開発のスキル不足
- 市場参入の際の窓口が不明瞭
今後の展望:スペーストランスフォーメーションへの招待
スペーストランスフォーメーション(SX:Space Transformation)は、宇宙ビジネスの成長と社会的価値の向上を促進していく概念です。今後、宇宙ビッグデータのさらなる活用や、小型衛星のコンステレーション構築、月・惑星探査などが加速し、新たなビジネス創出が期待されています。
また、デブリの除去や月面での資源探査なども進められ、宇宙利用の可能性は拡大を続けていくでしょう。
最後に
高橋氏の講演で提示されたように、宇宙ビジネスは成長し続ける市場として多様な可能性を持つ一方で、多くの課題も抱えています。今後のSX時代に向けて日本が国際的な競争力を確保するためには、民間企業の積極的な参入支援や、信頼性の高い技術開発が重要になってきます。
インソースデジタルアカデミーは、この動向を的確に捉え、公開講座プログラム「(半日研修)SX(スペーストランスフォーメーション)研修~宇宙ビジネスと宇宙開発」を開講しました。
SXという新たな価値創造のきっかけに。ぜひご参加ください!
宇宙が未来を切り拓く!?SXによる価値創造
連載記事①~SXとは?
連載記事②~宇宙開発とICTの歴史
※本記事は2025年01月20日現在の情報です。
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