2025.01.10
2025.01.20
宇宙の扉を開く~第1話「宇宙ビジネスの難しさ」
- 文字で構成されています。
※この記事内容は
宇宙開発には大きな夢があると同時に多くの困難が伴います。宇宙関係の業務に長く携わったベテランエンジニアが、みずから体験したさまざまなエピソードをお届けします。
夜な夜な衛星を修理する悪夢
私はN社に入社以来一貫して防衛事業を担当してきましたが、最後に宇宙事業も担当することになりました。定年前の10年間ですが担当した宇宙事業について、経験を交えながら話題が続く限りトピックスをシリーズでお話しさせていただこうと思います。
初回は「宇宙ビジネスの難しさ」についてです。
宇宙ビジネス分野とは、大きく分類すると、ロケット開発製造、衛星開発・製造、打ち上げサービス、衛星管制、衛星情報利用ビジネス等々に分類できます。N社はこの中で衛星の開発・製造を主体に事業を展開してきました。
私が担当して最初の仕事は「宇宙航空研究開発機構(JAXA)さんへのおわび回り」でした。打ち上げた衛星の中のある回路のダイオード2本がプラスとマイナスを間違えて取り付けられていたことが判明し、三百数十億円の衛星がダメになったという事故でした。ちょっとしたミスですが、打ち上げまで入れると膨大な経費が無駄になったばかりか、国内・海外からの評判と信頼を失う重大な結果となりました。
おわび回りをしながら、夜な夜な宇宙に駆け上がって衛星を修理する夢を何度も見てうなされたものです(実はこの後にも同様の事例がありましたが、またお話しします)。
このように衛星開発・製造の難しさは、軌道上の不具合が修理できないことに尽きます。このため、衛星に使用される電子部品は、すべて使用実績のある部品を優先的に選ぶしかありません。実は宇宙空間ではいろいろな宇宙線が飛び交っており、電子部品が宇宙線から受ける影響も、地上では完全には再現できません。
また、プラズマの影響も甚大な被害を与えることがあるようです。衛星部品・コンポーネントの選定が開発費を高くする要因の一つです。
ともかく、私にとって「宇宙事業=おわび回り」から始まりました。
次回以降、いろいろなトピックスをお届けしたいと思います。
※本記事は2025年01月20日現在の情報です。
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