2024.06.18
2024.06.17
デザイン思考で進めるプロジェクトマネジメント
- 文字で構成されています。
※この記事内容は
デザイン思考とは
デザイン思考(Design Thinking)とは、顧客やユーザーの視点に立って課題を解決へ導くためのプロセスや考え方です。近年では、新しいサービスや価値を生み出すための手法としても活用され、プロジェクトマネジメントの分野でも取り入れている企業も非常に多くなっています。
もともとはデザイナーが商品デザイン等を行う過程で用いる手法としてプロダクトデザインの分野で使われていました。しかし、2010年代から徐々にその手法に注目が集まり、クリエイティブな場面だけでなく、ビジネスシーンにおいても多く取り入れられるようになりました。
アート思考との違い
同じような言葉でアート思考と呼ばれる言葉もありますが、こちらはデザイナー本人の視点から自由にモノづくりのアイデアを考えていく手法です。
対してデザイン思考は商品・サービスを提供するユーザーからの視点を重視していくことで新しいアイデアを生み出していく手法です。最近ではシステム設計や問題解決といった広い範囲で組織内でも応用されています。
デザイン思考のプロセス
デザイン思考のプロセスは、主に5つのステップで構成されています。
- 1.共感(Empathize)
- デザイン思考の根幹になる部分になります。ユーザーや顧客の抱える問題・課題、潜在的なニーズを深く理解し、共感することに重点を置きます。
- 2.定義(Define)
- ユーザーのニーズに焦点を当てた問題定義を行うフェーズになります。収集した情報を分析し、解決すべき具体的な問題を明確にしていきます。
- 3.アイデアの創出(Ideate)
- 抽出した問題や課題に対して、チーム内で具体的な解決策のアイデアを出します。ブレインストーミングなどの手法を用いて、できるだけ自由に多様な視点からのアイデアを生成します。
- 4.試作(Prototype)
- アイデアを具体的な形にしていくフェーズになります。実際に作業をおこなってみたり、試作品を作成してみるなど、視覚的にアイデアを確認できる形にしていきます。
- 5.テスト(Test)
- プロトタイプを実際にユーザーに使用してもらうことでフィードバックを得るフェーズになります。テストが終わった後は、チーム内での確認・認証の段階を踏んで商品やサービスの完成を目指していきます。
上記のプロセスは循環しておこなわれます。得られたフィードバックに基づいて課題を再定義し、新しいアイデアを考え出していくことで、より良い解決策へと改善していくことができます。
デザイン思考のメリット
- ・ユーザー中心のアプローチ
ユーザー視点に立って課題を発見・解決する思考法のため、顧客満足度の高い商品やサービスを提供することができます。 - ・組織力・チームワーク強化
チーム内でのコミュニケーションに重点を置いているので、メンバーには役職や年齢を問わず参加してもらうことでチームワークの向上にもつながります。 - ・多様性を高める
異なる知識を持つ人々が協力し合うことで、課題を多角的な視点から分析することが可能になり、効果的な解決策を打ちだすことができます - ・迅速な品質改善
早期にプロトタイプを作成し、テストとフィードバックを繰り返していくことで、より製品やサービスの品質を高めていくことができます。
デザイン思考の注意すべきポイント
デザイン思考は、特別なスキルや知識が必要な難しい考え方ではありません。しかし、チーム内で共感やアイデアの創出などの5つの段階を追っていく必要があるので、時間的に急を要する案件や人的リソースが限られている案件には適していません。
また、デザイン思考は顧客やユーザー体験に重点を置きニーズを探求していく手法なので、ゼロベースから新規のサービスや商品を生み出していく作業には不向きであると考えられます
プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの目標を達成するための方法を指し、主にプロジェクトの計画、実行、監視、制御、そして完了までを管理するプロセスのことを言います。
プロジェクトマネージャー(以下PM)はプロジェクトを予定された期限内に終えられるようにするために、品質、コスト、人的リソース、スケジュール管理などをコントロールし、プロジェクトの成果を上げていくことを目指します。
プロジェクトマネジメントの現状
プロジェクトを成功に導くためには多くの課題や問題が発生します。チームメンバー間でのコミュニケーション不足が招く進捗の遅れ、プロジェクトの進行中に起きる要求・目標の増加や変更、予算の調整、人員や時間的なリソース確保、障害発生時の予期せぬリスクの備えなどが挙げられます。
こういった課題や問題を解決するためには、PMには困難を乗り越えるための知識や『実践力』が欠かせません。またアジャイル開発や今回記事で取り上げているデザイン思考などの新しい手法を学ぶことで、プロジェクトの成功に近づくことができます。
・プロマネの「極意」を身につける~ベテランPMが語る心構え4選
・プロジェクト管理の世界標準、PMBOK®とPMP®とは
デザイン思考をプロジェクトマネジメントに導入するメリット
デザイン思考をプロジェクトマネジメントに取り入れることで、従来の方法では達成が難しかった部分を補える多くの利点があります。
- ・ユーザーが抱える問題・ニーズの明確化
デザイン思考は、プロジェクトの初期段階で重要な役割を果たします。デザイン思考の共感と定義のフェーズを活用し、ユーザーの潜在的なニーズを理解することで、プロジェクトの計画の基礎になる方向性を決めることができます。 - ・問題解決策やアイデアの創出
デザイン思考は、プロジェクトに関わるメンバーでブレインストーミングやミーティングを行い、革新性と柔軟性を組み合わせることで新しい解決策やアイデアを出し合います。またプロジェクト内でアイデアの共有化が促進されることで、メンバー間の士気の向上や組織力の強化にもつながります。 - ・成功確率の向上とリスクの軽減
デザイン思考はプロトタイプを作成し、テストするプロセスを重視します。改善やフィードバックを繰り返していくことで、早い段階で改善点をプロジェクトに反映することが可能なので、問題・課題となるリスクの発生を抑えることができます。
一見異なる2つの概念のように思えますが、実は密接に関係しており、相乗効果を生み出すことでプロジェクトの成功確率を高めることができます。
まとめ
デザイン思考とプロジェクトマネジメントは、互いに補完し合う関係にあります。デザイン思考がユーザー中心の視点で新たなアイデアを生み出し、そのアイデアを具体的な計画や実行に落とし込むのがプロジェクトマネジメントになります。皆さんも、実際のプロジェクトにデザイン思考を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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※本記事は2024年06月17日現在の情報です。
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