2025.02.14
2025.02.19
宇宙の扉を開く~第5話「月周回衛星かぐや」
- 文字で構成されています。
※この記事内容は
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宇宙開発には大きな夢があると同時に多くの困難が伴います。宇宙関係の業務に長く携わったベテランエンジニアが、みずから体験したさまざまなエピソードをお届けします。
9年を要した大プロジェクト
今回から、2007年に打ち上げられた日本の月周回衛星「かぐや」のお話をいたします。
「かぐや」が撮影しNHKで放送された、月の地平線から昇る青い地球のハイビジョン映像を覚えておられる人もいるでしょう。私も感激のあまり涙を流しながら見たのを今でも覚えています。
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「かぐや」のイメージ図 ©JAXA/SELENE
「かぐや」のプロジェクトは開始から打ち上げまで9年間を要した大プロジェクトでした。謎の多い月の起源と進化の解明を目的とし、2007年9月14日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット13号機により打ち上げられました。私は打ち上げ直前に責任者になり「いいとこ取り」をさせていただいたかもしれません。
最初の計画では月着陸ミッションもあったのですが、予算の関係で計画変更となり、最終的に15のミッションとなりました。月を周回しながら14の観測機器を使って約2年間にわたり月表面の元素や鉱物、地形と表面付近の地下構造、磁気異常、重力場などの観測を行いました。月の起源を知ることは地球の起源を知ることに通じるのです。
「かぐや」には、「おきな」(翁)と「おうな」(媼)という子衛星を搭載していました。「かぐや」は月面からの高度100キロという低い軌道を周回するので、本体が月の裏側にあると地球との交信が途切れてしまいます。子衛星はこれより高い楕円軌道を周回し、通信を中継する役目を果たしました(注)。この2つの子衛星には燃料が積まれていませんので、姿勢と軌道を安定させるため、「かぐや」から切り離す際にはバネでスピンをかけるという離れ業を行いました。
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種子島宇宙センターから打ち上げられたH-IIAロケット13号機 ©JAXA
さて、打ち上げ当日は若干風が強く延期となる可能性もありましたが、打ち上げは見事成功し、「かぐや」は一発で計画通りの軌道に投入されました。その後、地球の重力場を使って加速するスイング・バイにより月へ向かう軌道に入り、二つの子衛星をそれぞれの軌道に切り離すと月周回軌道に入りました。この軌道変更も全て一発で成功し、搭載している燃料も随分余裕が出来ました。
「かぐや」はその後、約2年にわたる観測を行い、貴重かつ膨大なデータを取得しました。ミッション達成率は150%以上という快挙でプロジェクトは大成功となりました。
「かぐや」のミッションについて面白そうなものを次回からお伝えしたいと思います。
(注)「おきな」は月の重力場を観測するための電波源を搭載した子衛星、「おうな」は「かぐや」と地球との間の通信を中継する子衛星です。竹取物語(かぐや姫を育てた翁と媼)から取っていることは言うまでもありません。
※本記事は2025年02月19日現在の情報です。
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