2025.02.27
2025.03.03
宇宙の扉を開く~第8話「月は生きている?!」
- 文字で構成されています。
※この記事内容は

宇宙開発には大きな夢があると同時に多くの困難が伴います。宇宙関係の業務に長く携わったベテランエンジニアが、みずから体験したさまざまなエピソードをお届けします。
月の磁場を探れ
お月様に磁場があるか? これは長年にわたる疑問でした。
皆さんご存じの通り、地球には磁場があります。世界中のどこに行っても磁石のN極は常に北を指しますが、これは地球の北極にS極の性質があるため、引き寄せられるのです。地球の磁場を「地磁気」と呼びます。
地球では北極や南極にオーロラが現れますが、これは、太陽から飛んできた電子や陽子が地球のN極(南極)やS極(北極)に引き寄せられ、空気の粒に当たって、白や赤、緑の神秘的な光を発生するものです。
ですので、緯度の低い地域ではオーロラを見ることはほとんどありませんが、太陽面でフレアと呼ばれる爆発が起きたりすると、北海道や東北地方など日本でもオーロラが出現したことがあります。最近もニュースになったのでご覧になった方もいるでしょう。
さて、磁場が出来る理由には諸説ありますが、一説には、地球内部で重金属を含んだマグマが対流することにより発生した電流によって磁場が起きると言われています。
従って、もしお月様に磁場があれば、「月は生きている」事になります。

観測中の「かぐや」のイメージ図 ©JAXA
「かぐや」はこの謎に挑戦しました。「かぐや」本体から磁気センサーを付けた約10メートルのポールを伸ばし、月の全面をくまなく観測したのです。
結果は、磁場はバラバラで一定方向を指すことはありませんでした。残念! すなわち月内部にマグマの対流がなく、月は生きていないという事が分かったのです。
実は、この観測のためには「かぐや」本体の磁場が邪魔をします。衛星本体には多数の観測機器があり、多くの配線があります。この配線には電流が流れるのでその周りに磁場が生じてしまいます。そこで、これを打ち消すために一本一本の配線の電流の流れる向きを逆にして磁場を打ち消そうという設計でした。
磁気センサーは非常に感度が高いので、さらに10メートルのポールを使ってセンサーを衛星本体から離したのです。以前エンジニアの技術力の高さのお話をしましたが、この設計・製造でも技術力の高さが発揮されたと言えます。
※本記事は2025年03月03日現在の情報です。
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