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2025.03.10

2025.03.10

宇宙の扉を開く~第9話「月に水はあるか」

※この記事内容は

文字で構成されています。
宇宙の扉を開く~第9話「月に水はあるか」

宇宙開発には大きな夢があると同時に多くの困難が伴います。宇宙関係の業務に長く携わったベテランエンジニアが、みずから体験したさまざまなエピソードをお届けします。

クレーターの奥底に?

お月様に水はあるでしょうか?

月の北極と南極には一度も太陽光が当たっていない大きなクレーターがあることが知られており、そこに氷が存在するのでは?と大いに期待されていました。

もし水があると、人が住める可能性が出てくるだけでなく、月基地からさらに遠い宇宙に向けてのロケット発射にも役立ちます。水を電気分解すると酸素と水素が得られますが、これらがロケットの燃料の酸化剤として使用できるからです。

「かぐや」はこれに挑戦しました。各種の観測機器を使用し、くまなく探査しましたが、残念ながら存在を確認することは出来ませんでした。

その後も、各国が調査を続けています。現在までの結論は「水そのものはいまだ発見されていないが、存在する可能性は極めて高い」となっています。

クレーターに水があるイメージ図
月面のクレーターの中に氷があるかもしれない(イメージ図)

そのほかにも、「かぐや」は月全体の重力を測定しました。

月の重力は地球表面の6分の1といわれています。地球上で体重60キロの人は月面では体重10キロになるということです。これは均一ではなく月面の場所によって偏りがあるのです。

かつて、米国のアポロ計画のころ、月を回る衛星が月の裏側から表面に出てくるのを観測すると、予測した位置から微妙にズレていました。このことから月の裏側には何か重さの異なる岩石・鉱物が分布していて、その重力で衛星が引っ張られたのではと推測されていました。

そこで「かぐや」はこれを観測すべく、第6話でお話した子衛星「おきな」を利用し重力場の測定をしたわけです。「おきな」の電波源から発信される一定の周波数の電波を「かぐや」が受信した際、「かぐや」の軌道がズレていると、受信周波数が微妙に変化します。この変化をもとに、月の表側と裏側の重力場の違いを観測できたのです。

エンジニアの緻密な努力の成果と言えます。

前のお話:第8話「月は生きている?!」
次のお話:最終話「かぐや、月へ還る」

※本記事は2025年03月10日現在の情報です。

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